概要・説明
●生物発光・化学発光・蛍光相互関係
化学発光:化学反応のエネルギーを利用
化学反応で生じるエネルギーによって励起状態の発光化学種が作られ、これが基底状態に戻るときに余剰のエネルギーが光として放出されます。
例:ルミノールの化学発光
生物発光:生物化学反応のエネルギーを利用
発光触媒酵素が関与する化学反応において、励起状態の発光化学種が生成します。つぎに、これが基底状態に戻るときに余剰のエネルギーが光として放出されます。発光触媒酵素をルシフェラーゼ、他方、発光基質はルシフェリンと総称されることがあります。また、生物発光反応を、頭文字をとって、LL反応とよぶことがあります。
例:ホタルの生物発光
蛍光:励起光のエネルギーを利用
蛍光性化学物質に対して紫外線などを照射すると、蛍光性化学物質は励起状態に遷移し、つぎにこれが基底状態に戻るときに余剰のエネルギーが光として放出されます。この場合、電子遷移の結果生じる励起状態は、一重項励起状態です。したがって、蛍光は一重項励起状態の緩和過程から生じる光です。
例:フルオレセインの蛍光発光
りん光:励起光のエネルギーを利用
蛍光発光と同様に生じますが、この場合、電子遷移の結果生じる励起状態は、三重項励起状態です。したがって、蛍光は三重項励起状態の緩和過程から生じる光です。有機分子では、三重項励起状態は、一重項励起状態から一つの電子スピンが反転して生じます。また、遷移金属錯体で見られるように励起光を吸収して、三重項励起状態が直接生じることもあります。
例:アントラセンのりん光発光(アントラセンは蛍光物質でもあり、スペクトルスコピーの観点から電子励起状態を説明するときにしばしば用いられる教育的にも有用な物質です)
エネルギー移動過程が関与する発光:
電子励起状態の発光化学種のエネルギーが反応に関与するもう一つの物質(蛍光性)にエネルギーの移動が起こり(エネルギー移動)、結果的にもう一つの蛍光物質が励起されることがある。二次的に励起された蛍光物質がエネルギーを放出しながら基底状態に戻るときに光が放出されるものです。
例:オワンクラゲの生物発光(一次発光種は、励起状態の基質を結合したイクオリンであり、他方、二次発光種は、励起状態の緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein; GFP)です)